山旅(登山)の歩行
山旅(登山、トレッキング)は斜面を登ったり下ったりすることになりますので、平地を歩く方法とは異なった歩行技術が必要になります。
斜面の登り、下り
山旅(登山、トレッキング)では、山の斜面を登ったり下ったりすることになります。
経験的に登りがきつくて、下りは楽だと思われがちですが、実は下りの方は重量の3倍の負荷が足にかかると言われますので、歩行技術が無いと膝を悪くしてしまいます。
実は斜面の登りも下りとも基本的な姿勢は変わりません。だいたい以下のとおりになります。
- 視線は足下から数歩先の範囲で、コースの状況を見ながら歩行ラインを選ぶ。
- 足裏全体を地面に着けるようにする。傾斜がある程度キツイ場合、必要に応じてつま先を「逆ハの字」に開くと靴底がしっかり地面を捉えることができる。
- 歩幅は小さく、無理なく前足に体重移動ができる程度。斜面の傾斜によって、歩幅は変わります。
- 足幅を肩幅程度に開くと楽な気がする。
その他、登りの場合は、登りたいという気持ちが優先して、地面をけり出す姿勢になると疲れやすくなってしまいます。必ず上体を起こし背筋を伸ばすこと、軸足の真上に腰があって、腰折れ状態にならないことが大事です。
下りは最も足を痛めやすいし、疲労がたまりやすいです。ドスンドスンと負担のかかる下り方をすると膝を痛めてしまうので、リズムカルに一定のペースを保つと良いです。
この時、腰が引けて恐る恐る歩くのはスリップしやすくなるので、思い切って斜面にまっすぐ立つような姿勢を心がけると良いです。また、膝を柔軟に曲げて膝へのショックを和らげます。
階段状・段差の登り、下り
階段などの段差のある登りは、一見安定しそうに見えますが自分の得意とする歩幅やペースを崩される事が多いです。大きな段差が連続するところでは、思い切ってペースを落とすと疲労が違ってきます。
あるいは、階段状で足場が決められている中にも自分に無理のない足場があるかもしれないので、探してみると良いです。
また、下りは最もバランスを崩したり、足を痛めたりしやすいので、一定のリズムを保ちながら丁寧に下るようしましょう。斜面に対して横向きに下るのは一見楽そうに感じますが、膝に横向きの力が加わって膝を痛めやすくなります。
急な斜面の下りでは、ザックの底を段差や岩に当ててバランスを崩しやすいので注意が必要です。場合によっては、後向きになって三点確保の姿勢で確実に下る方が安全なときもあります。
平坦な道や林道歩き
道が平坦な場合、歩行ペースをつかんだり、疲労をためないように一定のリズムで歩くようにしましょう。
登山道のどこを歩くのか?
整備された登山道でも漫然と歩くのではなく、道の中央か山側を歩くようにします。またパーティ行動ではメンバーが落とした落石が後続者を直撃することがあるので、メンバーの位置を注意しながら歩くように心がけたいですね。
雨天時や降雨後の岩場を通過する時は、滑りやすくなったスラブ(一枚岩)などやコケや水垢のついた部分を極力さけて、登山道の中でも安定した岩場が得られるところを歩くようにします。また倒木、切り株なども滑りやすいので、乗らないようにした方が良いです。
岩場の歩行
岩場を通過する登山は、岩場特有の危険さを秘めています。露出度が高く、転落やスリップの可能性があり、落石や浮き石が恐ろしいです。このような岩場を通過するには、ルートを探すセンスが要求されます。
岩場で登りやすい部分は、傾斜が緩く、ホールド(手がかり)、スタンス(足場)が数多く存在するところです。下から見て凸凹しているところがソコに当たります。また、草が多い岩場は一般的にもろいので、崩れやすく不安定。スッキリと岩が露出している方が登りやすいです。
岩場では、手足4本のうち3本をホールド、スタンスして保ち、残りの1本を動かすようにする(三点支持、三点確保)姿勢が基本となります。岩にベタッと張り付くのは危険そのもので、岩場は見渡せないし滑りやすくなります。岩と体は離して確実に登らないといけません。
実は岩場では、スタンスの使い方が重要だと思います。傾斜が急な岩場では、体を上へ上げるのは足の力の方が遥に大きいし、足先や指先だけがかかる小さなホールド、スタンスでも無理のない動きで体を上げることができます。(と言うことから、岩場歩きはソールは硬い方がいいのかもしれません)
落石はとても怖いです。小石ほどの石であっても一気に加速して風を切って落ちていきます。落石の事故を防ぐには、落ちそうな石に触れないことと、落としたら「ラクッ」と叫んで周りに周知することです。
鎖場、ハシゴの歩行
鎖場や固定ロープが取り付けられている場所がありますが、これらは危険だから取り付けられています。鎖やロープの固定には注意して適度に引っ張ってみて安全を確認するとともに、ホールドの一つとして使用します。全体重を預けるような事はしてはいけません。
また、鎖は人の動きとともに動くので、鎖を固定する支点と支点の間に複数の人間が入ると思いがけない方向に鎖が動いて危険です。
梯子は、雨や霧、凍結などで滑りやすい事が多いので、一段ずつ丁寧に登る必要があります。姿勢は岩場同様、三点支持になります。