山旅(登山)で山の天気を知る
山の天気を知る上で、どうして雲ができて雨が降るのかを知らないと、観天望気など簡単に理解できないと思います。
天気を左右するのは、大気が含む水蒸気の量によります。大気に含まれる水蒸気の量は温度の高低でそれぞれ限界があり、限度を超えた水蒸気が大気の中にあると雲になって雨や雪あるいはガスになります。冷たい大気は暖かい大気に比べ水蒸気の含有限界が低いので、暖かい大気が冷やされると限界点が下がり余った水蒸気が雨などになります。
高い場所ほど気温は低いので冷やされます。山の斜面は太陽の熱を受けやすいため暖まり、暖まった空気は軽くなって上昇します。この空気が上空で冷やされるため雲ができます。強い上昇気流ほど背の高い雲を作るりカミナリの元になります。
低気圧や台風は中心に向かって空気が吹き込み、上へ上へと逃げる空気が上昇気流を作るため悪天の原因となります。
風が吹く…どうして?
風は大気の移動と考えればよいです。基本は気圧の高い方から低い方へ空気は動き、その速度(風速)は、等圧線の間隔が狭いところが強くなります。注意して欲しいのは、ここで言う風速は風が強いかどうかであって、突然吹く突風ではありません。
その他、局地風というものがあります。関東で吹く「からっ風」などです。山で言えば、森林や地形の影響を受けやすいですが、山谷風があり日中は山に向かって風が吹き上がり夜間はその逆になります。
山の気温
山の基礎知識として、標高が100m増すごとに0.6度気温が下がることと、風速が1メートル増すごとに体感温度が1度下がることがあります。これにより衣料を考えます。放射冷却により晴れた日の朝は冷え込みますので、夏場であってもフリースの一枚は欲しいことが理解できると思います。
気温による観天望気としては、ムッとした暑い風が吹き上がれば、背の高い雲ができやすいし、低気圧に関連した場合は、数時間後に寒冷前線が通過することも考えられます。
温暖前線、寒冷前線、停滞前線
日本付近の低気圧は、たいてい温暖前線と寒冷前線を伴っています。
低気圧は風が吹き込んで逃げ場を失った空気が上昇流を発生させます。低気圧の周りには温暖前線と寒冷前線を作る場合が多く、これが悪天を生むことになります。
前線とは暖かい空気と冷たい空気がぶつかっている状態で、暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ行き、牽制しながら均衡している状態です。暖かい空気の勢いが強ければ温暖前線、冷たい空気が強ければ寒冷前線、どちらも同じ強さなら停滞前線となります。
低気圧に対して、だいたい東向きに温暖前線を作り、西向きに寒冷前線を作ります。温暖前線で雨が降り、寒冷前線は激しい雨が降ると考えてよいです。寒冷前線の通過前は高温になってぐずつき数時間後に激しい雨が降ります。寒冷前線が通過すると、急激に寒くなって天気は快方に向かいます。
停滞前線はだいたい東西に張り出しています。この前線では空気の移動が少ない分、雨はそれほど強くはありません。停滞前線の種類として梅雨前線や秋雨前線がありますが、梅雨前線の場合は梅雨明け前に低気圧が悪さをして集中豪雨になりやすいし、秋雨前線ができる9月頃は台風がやってくるので注意が必要です。
ところで、山では天気の回復が遅いと言われますが、これは天気図に書かれている様に前線が真下に作られていないためです。冷たい空気が下に潜り込んだり、あるいは暖かい空気が冷たい空気の上を這っていくわけですから、高さの断面で見ると前線は斜めにできるわけです。そのため山では長く影響することになります。
また、山では雨も風も平地に比べて強いことも注意すべきです。ティンバーライン(森林限界)を越えた稜線などは桁違いになりますので注意下さい。
高気圧
天気を良くする高気圧。
日本にはどのような高気圧があるのかまとめてみましょう。
- 移動性高気圧
- 大陸育ちの乾いた高気圧。春や秋に低気圧と交互にやって来る。
- 太平洋高気圧
- 夏の高気圧の代名詞的存在。海育ちなので空気が湿っている。このため、夏場は夕立になることが多い。
- シベリア高気圧
- 冬にやってくる高気圧。こいつが居るときの天気図は西高東低(冬型)の気圧配置と言われる。冷たく乾いた空気であるが、日本海側に大量の雪を降らせる。
- オホーツク高気圧
- 冷たくて湿った高気圧。こいつから吹き出す空気は冷たいとは言っても湿っているので、低い雲を作る。
四季による変化
日本には四季があります。
季節によって山は美しい景観になりますので、四季の特徴をまとめてみたいと思います。
- 春
- 移動性高気圧と低気圧が交互に来るシーズン。本州南岸を進む低気圧(南岸低気圧あるいは台湾坊主)により、太平洋側の山地に雪が降り、強い南風(春一番もその一種)が吹く。4月上旬はぐずついた天気が続く場合もあります。また二つ玉低気圧(日本列島に2つ低気圧がある)は注意が必要。
- 梅雨
- 梅雨前線が日本列島に居座る。主に前線付近とその南側で降る。梅雨明けの前は、低気圧も絡んで集中豪雨になりやすい。
- 夏
- オホーツク海に高気圧があると、東北と関東の太平洋側にはこの高気圧から湿った冷たい空気が流れ込み、はっきりしない天気になる。太平洋高気圧の影響による午後の夕立が多い。
- 秋
- 秋雨のシーズンであり秋雨前線が張り出しますし台風のシーズンでもある。秋雨以降は移動性高気圧と低気圧が交互に来るが、時々台風が来てその規則性を乱してくれる。
- 冬
- 西高東低の気圧配置(いわゆる冬型)。シベリア高気圧の影響で日本海側はいわゆるすじ状の雲ができて雪が降るが、八ヶ岳より南や東は晴れる日が多い。(上空に寒気が入ると、太平洋側でも雪が降る場合もある。)
観天望気
観天望気をしてみます。
観天望気とは数時間後に起きるであろう天気変化を雲の形、変化、風向きやその変化、気温や湿度とその変化、太陽光線の様子、生物の行動などから天候の予測することです。
- ひこうき雲が流れる時は、大気の状態は不安定
- レンズ雲ができたら、天候は悪い
- 明け方寒ければ、放射冷却の影響なので天気は良い
- 強風が吹くと、低気圧や気圧の谷が接近している可能性があるので動向に注意
- 風向きが急変すると、前線の通過時が考えられる
- 星空がキラキラしているときは、大気が安定している
- 遠くの物音が聞こえたら、雨が降るか風が強くなる