バンテアイ・スレイ

バンテアイ・スレイは、シェムリアップから約40キロメートル北東にあるクメール美術最高峰の寺院です。1914年に現地のフナ村の人たちが発見しました。バンテアイ・スレイのデヴァター(女神)の彫像は「東洋のモナリザ」とも呼ばれています。
バンテアイ・スレイ
バンテアイ・スレイは967年にラジェンドラヴァルマン2世とジャヤヴァルマン5世により建造されたヒンドゥー教の寺院です。バンテアイは砦、スレイは女性を意味するため「女性の砦」という意味になりますが、赤を基調とした色合いで彫刻が精巧なことから女性らしいということで名づけられました。
バンテアイ・スレイは、シヴァ神やヴィシュヌ神に捧げられた周囲約400メートルの小さな寺院です。この寺院の特徴は、美しく精巧な彫刻が施されているレリーフや彫像が多いことで、小さな寺院のためゆっくりと見学することができます。
細かい彫刻が施されています
バンテアイ・スレイの第一周壁にある東門を抜けると、シヴァ神のシンボルであるリンガの石柱が並ぶ参道に出ます。バンテアイ・スレイは二重の周壁で囲まれており、外殻の第一周壁から第二周壁をつなぐ参道は王様専用の参道として整備されていました。現在は凸凹で参道の周囲は雨水で水没していますが、もともとは平らに整備されていました。
リンガ(石柱)が並びます
リンガの台座が残ります
参道を過ぎたあたりの両側には図書館跡がありました。かつてはお経や宝物が保管されていた建物がありましたが、現在はその面影はなく崩れた建物と化しています。さらに参道を進むと第二周壁に到着します。
かつては黄色い門でした
象の聖水を受けるヴィシュヌ神の妻ラクシュミ
第二周壁の破風は昔はすべて黄色で蛇の尻尾がイメージされています。門をすぎた中の破風には象の聖水を受けるヴィシュヌ神の妻ラクシュミの彫刻があり、そのラクシュミの下にはガルーダの彫刻が施されています。
第一周壁と第二周壁の間の参道にはリンガが並んでいましたが、リンガとはシヴァ神の男性器のことで女性器はヨーニと呼ばれます。これらは子孫繁栄の象徴とされていました。ダブルリンガは女性器(ヨーニ)の台座に男性器(リンガ)が設置されていました。
ヨーニ(台座)のみ残ります
東塔門からは中央塔の中まで見えます
中央回廊にはたくさんの堂宇が立ち並びます。屋根の形はアンコール・ワットと同じで、蓮の花の蕾の形をしています。この形はカンボジアの人々が手を合わせる形にもなっています。中央祠堂には猿の像がいくつか安置されています。この猿が孫悟空モチーフになったようです。
孫悟空のモチーフの像が並びます
祠堂の16体のデヴァダーで最も美しいです
バンテアイ・スレイで特に有名な見どころは、美しいデヴァダー(女神)の彫像です。このうち最も美しいデヴァダーは「東洋のモナリザ」とも呼ばれています。フランス人作家アンドレ・マルローがこの彫像を転売目的で盗もうとした事件が起きています。
経蔵はお経が納められていました。目の前に入口ような扉がありますが、実際に入ることができない偽の入口です。経蔵のレリーフも綺麗に残されていて、破壊の神シヴァが瞑想するところを魔王ラヴァナが地面を揺すって妨害しています。
お経が納められていました
彫刻が施される西側にある塔門です
観光客が多いので遺跡の近くにショップがたくさんあり商品を眺めていると人が寄ってきます。友人の話では、バンテアイ・スレイ周辺のお店で食事を摂っていたとき、たくさんの子供が寄りついてきました。それを良く思わない店長は、何度も子供を追っ払いましたが最後は相当怒ってしまい包丁を振り回していたそうです。