地蔵田遺跡

地蔵田遺跡は秋田市南東部にある御所野台地の南端、標高３１メートルの舌状台地上に立地しています。昭和60年(1985年)の発掘調査で旧石器・縄文・弥生時代の遺跡であることがわかりました。木柵で囲まれた弥生時代前期の集落跡が発見されたことで特に注目され、稲作農耕の文化成立の過程を知るうえで特に重要であるため、平成８年(1996年)に国の史跡に指定されました。

地蔵田遺跡の特徴

地蔵田遺跡は今から３万５千年前の旧石器時代後期に大陸から移住してきた人が造った集落跡です。雄物川と岩見川の合流点をのぞむ標高約３０メートルの段丘上に立地しています。全長１７０メートルの楕円形の木柵で囲まれたムラは、旧石器時代から縄文時代、弥生時代までの複合遺跡でした。

地蔵田遺跡は、全国で初めて木柵で囲まれた弥生時代前期の集落跡が発見されて注目を集めました。居住区の周囲を木柵で楕円形に囲み、その周辺に墓域および不用品の廃棄場があり、弥生時代の西日本の環濠集落の基本的な構造と共通していますが、木柵がめぐる集落は全国的にもあまり類例がありません。

地蔵田遺跡の居住区域

地蔵田遺跡の居住区は木柵で囲まれていました。木柵は直径２０センチほどの木材を密に立て並べたもので、一部は二重に巡るため造り替えの痕跡と考えられています。内側のものが長径６１メートル、短径４７メートル、全長１７０メートルありました。柵列が一部途切れているところが幾つかあり、そこが居住区の出入口と考えられています。

住居跡は直径８メートルほどのほぼ円形の周溝を巡らして、中央に炉を据えて炉のまわりに４本の主柱を配しています。このような構造は同時期の他の遺跡でも発見されているため、弥生時代の一般的な住居構造であると考えられています。時代が進むにつれ住居は建替えられ、多いものでは６回建替えられました。元の住居から位置をずらして大きいものでは１３メートルの規模に拡大されており、住居数も４軒に増加しています。

地蔵田遺跡の墓領域

地蔵田遺跡の墓領域は集落の木柵に接して直径４０メートルほどの範囲にあり、土器棺墓２５基、土壙墓５１基が発見されています。土器棺墓から骨や副葬品などは出土されていませんが、直径３０～５０センチの壺形土器と甕形土器が出土しています。人壺形土器の中には、西日本の弥生前期に栄えた遠賀川系の土器や縄文時代の伝統を継ぐ縄文が施された土器などが確認されています。

土壙墓は、楕円形、長方形、小判形をしていますが、楕円形のものが多数を占めています。土壙墓の規模は長軸の長さが約１～２メートルで幅は約１メートルです。人骨は出土していませんが、土壙墓から凝灰岩製の小玉、碧玉製の玉、擬灰岩製の管玉、玉髄製の勾玉、ベンガラがそれぞれ出土しています。

地蔵田遺跡の発掘品

地蔵田遺跡では、甕形土器、鉢形土器、高坏形土器、壺形土器、蓋形土器で構成される弥生土器のほかに石斧、石鏃などの石器類や石製品、有孔土製品、土偶、紡錘車などの土製品が出土しています。石器が円形に発見されたため、人々が輪になり石器を使用したり製造したりしていました。居住区の出入口近くには多量の土器や石器などが集まるため廃棄場として利用されたと考えられています。

地蔵田遺跡で発見された土器は、西日本の前期弥生土器の制作技法、器形、文様に共通する遠賀川系土器であるため、この集落が弥生時代前期に他所から移り住んでできて初期の稲作農耕文化を受容したことを示しています。遠賀川系土器には他所から搬入したと考えられるものと地元で製作されたと考えられるものがあり、稲作農耕文化を受容して成立した過程の解明に重要な役割を果たすと考えられています。

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