鳥潟会館

旧鳥潟家住宅は、江戸時代に建造された旧主屋を１７代当主鳥潟隆三が増改築して庭園を造営した邸宅になります。昭和26年(1951年)に当時の花岡町に寄贈され鳥潟会館として一般に開放されました。東北地方有数の文化遺産と言われ、平成23年(2011年)に建造物が秋田県有形文化財になり庭園が秋田県名勝に指定されました。

鳥潟家

鳥潟家は慶長年間(1596年～1614年)から続く旧家で花岡村の肝煎を１３代務めてきた家柄です。肝煎とは庄屋や名主と同じような役割で、身分は農民ではありますが納税や事務を取りまとめて行政との橋渡しをする重要な役割です。

鳥潟家は著名な人物を輩出されている家柄としても知られます。鳥潟会館を整備した鳥潟隆三は医学博士として外用薬コクチゲンを発明した人物であり、ほかにも世界初の実用的な無線電話方式であるＴＹＫ式無線電話機の開発を主導した鳥潟右一、ヨーロッパ各地を巡業した軽業師の鳥潟小三吉がいます。

旧鳥潟家住宅

旧鳥潟家住宅は宝暦11年(1761年)頃に建造された旧主屋を１７代当主鳥潟隆三が曳き屋して増改築しました。鳥潟隆三は京都帝国大学を卒業した医師で京都に住んでいたこともあり、京文化を地元に知らしめたいとの思いで昭和11年(1936年)に５年の歳月をかけて旧主屋の佇まいを残しつつ随所に京風の意匠を取り入れた邸宅と庭園を整備しました。

旧鳥潟家住宅のガラスは昭和初期の手延べガラスが使われています。現代のガラスのように平らではなく歪みがあるためガラス越しに景色を見るとユラユラした感じに見えます。手延べガラスは現在は作られていないため大変貴重なものです。また廊下はウグイス張りで歩くとキュッキュと音が鳴ります。

旧鳥潟家住宅は当時としては先進的な建物でした。主屋から離れまでの船底天井の廊下にある窓は落とし猿と呼ばれる仕組みが施され、窓を閉めれば自動でピンが落ちるオートロックになります。また離れには使用人を呼び出すブザーが取り付けられており、離れの近くにあるトイレは水洗で、風呂は蛇口で水を張ることができる設備を備えていました。

鳥潟博士は京都で大きな病院を経営していたため、鳥潟会館は年に数度だけ避暑で帰省したときに使用していました。それ以外の期間は土間にある部屋で親戚が生活して管理するほか、学校教員などの下宿としても利用されていました。土間は昔ながらの佇まいですが、電動ポンプで天井にある水槽に水を貯め、そこから各部屋に水を供給する設備が設けられ、地下倉庫も作られていて機能的な設備が随所に見られます。

旧鳥潟家住宅庭園

旧鳥潟家住宅庭園は、昭和11年(1936年)に邸宅の整備とともに拡張・整備されました。京都から造園師を招いて庭づくりが行われ、主景をなす五稜池を中心として入口から奥の茶室まで通路が巡る池泉回遊式庭園です。７代目小川治兵衛の門下である粕谷幸作が作庭に携わりました。

庭石に京都の鞍馬石を使うなど京風の情緒豊かな庭園として整備されています。主人室の沓脱石は横幅３１５センチの鞍馬石が使用されており、これだけ大きな鞍馬石は産出しないと言われています。このほか鳥海山で採れた鳥海石も庭石に使用されています。主屋の前にある手水鉢は鳥海石で作られています。

庭園の奥に設けられている茅葺の茶室は秋田県唯一の草庵茶室です。美しく機能的な邸宅と庭園を造った鳥潟氏は風情ある茶室で茶を楽しむ文化人だったことが伺えます。

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