院内銀山跡

院内銀山は江戸時代初期に発見され、秋田佐竹藩の直営銀山として経営されました。開坑当初から石見、生野の銀山とともに日本三大銀山と称され天保年間は年間の産銀量が千貫を越えたことで「天保の盛り山」と称される最盛期を迎えました。明治時代には明治天皇が五番坑(御幸坑)に入坑され、この日を日本の鉱山記念日と定められました。院内銀山は近代化を推し進めて採掘されましたが、銀価の崩落や鉱脈の堀尽しなどで次第に衰退していき、昭和29年(1954年)には完全閉山しました。

村山宗兵衛と院内銀山の発見

慶長５年(1600年)の関ヶ原の戦いが終わり浪人となった村山宗兵衛は、福井県越前国から雄勝町小野の知人に身を寄せて雄勝川で砂金採りをしていたときに雄物川で銀の鉱石を発見しました。雄物川の上流に銀を採掘できる場所を知り雄物川上流の山奥を捜索して慶長11年(1606年)に大鉱脈の院内銀山を発見しました。村山宗兵衛が発見した場所は雄物川の上流にあたる十分一沢の不動滝の上にある不動坑といわれ、現在も残されている早房坑と洞窟内で繋がっています。

院内銀山から銀鉱石の採掘を認められた佐竹藩では山を専門に監督する銀山奉行を定めて必要な道具を準備し掘り出しを行いました。徳川家康が将軍になると五街道が整備され、北に向かう奥州街道が福島から分かれて秋田を経由して青森に向かう羽州街道が整備されます。羽州街道の院内には佐竹藩への出入りを監視するために関所が設けられますが、院内銀山で働く工夫が逃げないように監視する役割もありました。

江戸時代の銀の採掘

院内銀山で掘り出される質の高い銀は大評判で、石見銀山、生野銀山とともに日本三大銀山と呼ばれました。院内銀山の名前が全国に知られるようになると銀山には従業員だけで７千人を超える人々が集まり、静かな山間には山小屋千軒、下町千軒と呼ばれる合計２千軒の集落ができました。秋田佐竹藩は掘り出された銀の量に応じて褒美を与えるなど手厚く保護し、銀山で働く人たちに生活や文化面での大きなゆとりを与えました。その半面、山を運営するための取り締まりは厳しく、特に銀山に運び込まれる品物などは十分一御番所を設けて値段の１０分の１の税金を課しました。

純度の高い生成されたたくさんの銀は毎年幕府に献上され、幕府は天下の御役山と褒め讃えました。天保４年(1833年)から約１０年間は年間の産銀量が千貫を越え、銀山の人口は１万５千人あまりを数えました。たくさんの店が軒を連ね、建てられた寺院は１１もありました。しかし、鉱山経営は大量の地下水に悩まされ大変な水抜き作業との戦いでした。また、ここで働く工夫は作業中に吸い込む鉱石でよろけと呼ばれる珪肺病により若くして亡くなる人が増えました。佐竹藩はお抱え医師の門屋養安を院内銀山の病気治療に当てますが、衛生環境の悪い坑内で作業を行い、住まいが密集していて病気が移りやすく、薬品も手に入りにくいことなどを門屋養安が自身の日記に記しています。

院内銀山は採掘が進むにつれて山は荒れ果て、相次ぐ大火災や度重なる洪水により慶長17年(1612年)をピークに銀の採掘量を減らしていきました。佐竹藩は鉱山を復興する手立てを加え、様々な工夫により再び銀の採掘量が増えました。この頃、鉱石から金を取り出す方法を改良したことにより銀の生産量も日本一となりました。

院内銀山は幕府や秋田佐竹藩の財政を支える屋台骨でした。銀山の総鎮守として院内銀山の採掘開始と同時期の慶長12年(1607)に創建した金山神社は、佐竹藩の依頼により多数の大工が秋田市久保田から派遣されて建立しました。金山神社は金山彦命を祀り、藩主の尊崇は篤く直筆の書などが奉納されています。現在の社殿は文政13年(1830年)に久保田の棟梁米沢屋倉松が建築しました。

院内銀山の衰退と閉山

明治時代になると政府の持ち物となり明治12年(1879年)にドイツ人技師バンザーとロージングの両名を招いて指導を仰ぎ最新式の機械を導入して採掘を行いました。明治14年(1881年)９月21日には明治天皇が銀山五番坑に御幸され、この日が全国の鉱山記念日に指定されました。それ以来、明治天皇が入坑された五番坑は御幸坑と呼ばれるようになりました。

明治17年(1884年)には政府に依頼されて古河鉱業の古河市兵衛に払い下げられて最新式の掘削機器導入して、同時に買収した日本国内のほかの鉱山から西洋で学んだ技術者を連れて来て近代的な鉱山経営を行いました。これにより一時的に日本一の生産量を誇りますが、鉱脈を堀り尽くしてしまい次第に産出量が減少していき、昭和29年(1954年)に鉱山に関するすべての事業が廃止されて完全閉山しました。

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