まいぷら

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大森と海の恵み

東京都大田区の旅行で訪れた観光名所、大森海苔のふるさと館

大森を含む東京都の沿岸部は、近代に埋め立てられるまで遠浅の砂浜が広がりました。縄文時代後期に造られた大森貝塚は、明治時代に日本で初めて学術的な発掘調査が行われて縄文時代の存在を明らかにしました。また、江戸時代の中頃から昭和初期までは海苔養殖が行われ、大森海苔は味・量ともに全国一を誇り、海苔生産と流通の方法が全国へと伝えられました。

大森貝塚

大森貝塚は、明治10年(1877年)に腕足類の研究のため来日したアメリカ人動物学者エドワード・シルベスター・モースが、横浜から東京までの汽車の中で貝塚の山を発見しました。大森貝塚は古くから存在が知られていましたが、モース博士により日本で初めて学術的な発掘調査が行われました。明治12年(1879年)には発掘調査報告書が出版されたため、日本考古学発祥の地と言われるようになりました。

大森貝塚

東京都大田区の大森貝塚日本で初めて発掘調査が行われました

モース博士

東京都大田区の大森貝塚_モース博士東京大学教授として最先端の動物学を日本に伝えました

貝塚は縄文人が使わなくなったものを纏めて捨てていた場所です。大半は貝殻のため貝塚と呼ばれますが、動物の骨のほか土器や土偶なども出土します。モースは大森貝塚から出土した土器を見て、縄目の紋様を持つ土器と名付けたため直訳して縄文土器と呼ばれるようになりました。また、縄文土器が出土する時代を縄文時代と呼ぶようになりました。

大森貝塚

東京都大田区の大森貝塚貝塚が出土した穴です

大森貝塚貝層

東京都大田区の大森貝塚城も時代後期の比較的大きな貝が積みあがります

大森貝塚は縄文時代後期に造られたと考えられています。大森貝塚からは関東地方特有の土器のほか東北地方とも交易があり東北地方の土器も出土しています。大森貝塚から出土した165点の出土品は国の重要文化財に指定され、大森貝塚も昭和30年(1955年)に国の史跡に指定されました。

大森海苔の歴史

縄文時代から食されていると考えられている海苔は、飛鳥時代の大宝元年(701年)に制定された日本初の成文憲法である大宝律令で大和朝廷への税の一つに含まれるほど貴重なものでした。当時は岩場に生えていた岩海苔を収穫していたと考えられています。江戸時代の享保2年(1718年)には品川の海に初めて海苔養殖が行われるようになりました。

海苔収穫の道具

東京都大田区の大森海苔のふるさと館の内部海苔の収穫で使われた道具です

海苔下駄

東京都大田区の大森海苔のふるさと館の海苔下駄海苔を獲るために使われた丈の長い下駄です

現在の網ヒビが登場する以前は枝を束ねたソダヒビを植えて海苔の養殖を行いました。水深に合わせた丈の長い海苔下駄を使い、海を歩いて養殖された海苔を収穫していました。こうして養殖された品川沿岸の海苔は江戸の特産品となり、大森村では延享3年(1746年)から海苔業税を江戸幕府に納めています。

網ヒビによる海苔養殖

ソダヒビによる海苔の養殖栽培は、気候の変化などの影響を受けて安定的に収穫することはできませんでした。そこで大森の海苔養殖では、大正15年(1926年)頃から現在も使われる網ヒビを導入して安定的に海苔を収穫するようにしました。

海苔船の作業風景

東京都大田区の大森海苔のふるさと館の海苔船の作業風景養殖した海苔を取り込む様子です

最後の海苔船「伊藤丸」

東京都大田区の大森海苔のふるさと館の最後の海苔船「伊藤丸」国の重要文化財に指定される最後の海苔船です

網ヒビで養殖された海苔は、大きな船に搭載されたベカブネと呼ばれる小さな船で海苔を収穫しました。大森海苔のふるさと館に展示される伊藤丸は、昭和30年(1955年)代に造船された大田区に唯一残る海苔船で国の重要文化財に指定されています。

四角い海苔と流通拡大

海苔は天日干しされて海苔問屋に卸され、問屋はさらに焙炉と呼ばれる乾燥機で炭で火入れして販売していましたが、大きさや品質が統一されていませんでした。安永年間(1772~1780年)になると再生紙が浅草で盛んに生産されるようになり、その技術を海苔に転用して現在のような四角い海苔が開発されました。四角い海苔は大きさが均一で流通しやすく、手巻寿司として使われることで海苔の需要が高まりました。

海苔つけ場

東京都大田区の大森海苔のふるさと館の海苔つけ場日本一の生産量を誇る海苔の作業場です

海苔枠干し

東京都大田区の大森海苔のふるさと館の海苔枠干し和紙と同じ製法で天日干しされていました

戦後の高度経済成長期では東京湾の埋め立てが加速しました。これにより日本一を誇った大森の海苔養殖は昭和38年(1963年)に終了することになります。海苔の収穫量は昭和5年(1930年)から養殖を開始した佐賀県が日本一の座に就きますが、その技術は東京大森の養殖方法と流通の仕組みが基本になります。大森で育まれた海苔の文化は、和食:日本人の伝統的な食文化として平成25年(2013年)にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

まち旅(旅行、観光)の記録

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住所
〒143-0005 東京都大田区平和の森公園2−2
アクセス
京急「平和島」駅から徒歩15分
営業時間
9:00~17:00(6月から9月までは19時まで)
料金
無料
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