中津川流域の縄文遺跡群

新潟県南部にある中津川は、長野県から新潟県へと貫流する信濃川から枝分かれしています。この中津川の両岸にある段丘には、縄文時代中期に生活が営まれた沖ノ原遺跡と堂平遺跡が残ります。沖ノ原遺跡は大規模な集落跡が極めて良好な状態で発見されたため、昭和53年(1978年)に国指定史跡に指定されました。

沖ノ原遺跡の特徴

沖ノ原遺跡は、新潟県南部の信濃川と中津川に挟まれた段丘上の標高４５０メートルほどに位置している縄文時代中期の遺跡です。長野県から新潟県に貫流する信濃川は、中津川に合流するまでに南北約２キロにわたる７段の河岸段丘を形成しており、その最も高い面に沖ノ原遺跡があります。河岸段丘の平坦面を侵食する小谷の谷頭は湧水があるため、縄文人はこの自然湧水で生活を営んだと考えられています。

昭和47年(1972年)～昭和48年(1973年)の試掘調査により竪穴住居跡４９軒、長方形大形家屋跡３軒、敷石住居跡１軒の計５３軒の住居跡が発見され、少なくとも全体で住居跡１００以上の存在が予想されています。それらの住居跡は、直径約１３０メートルの環状に展開し、中央部分には施設がない広場がある典型的な環状集落です。環状集落の東側と西側に長方形の大形の家屋跡３軒が発見されており、そのうち１つの家屋の内部から炭化した木の実のクッキーが出土しており共同作業場とも考えられています。

沖ノ原遺跡の発掘品

沖ノ原遺跡からは火焔型土器をはじめとする縄文土器や石器、土偶のほか、木の実を粉にして焼いたクッキー状炭化物が出土しています。新潟県地方の繩文時代中期に大形の口縁部突起などに特色をもつ火焔型土器が信濃川流域を中心に発達しますが、沖ノ原遺跡はその分布圏の最も上流域に位置するもので火焔型土器が発見されています。

クッキー状炭化物は木の実をすり潰して作ったクッキーの炭化物で、特に栗が多く見つかります。当時の食生活を考えるうえで重要な資料となりました。沖ノ原遺跡から出土した火焔型土器や1,686点に上る遺蹟物などは平成７年(1995年)に新潟県指定文化財に指定されています。

堂平遺跡

堂平遺跡は中津川右岸の標高約４７０メートルの河岸段丘に位置する縄文時代中期の遺跡です。堂平遺跡からは残存状況の良好な竪穴住居跡が多く検出されたほか、清津川など周辺の河川から石を運んで造営されたと考えられる推定径約５０メートルの環状列石が見つかりました。また、出土している石棒は、七ツ釜の柱状節理の石から作られています。

堂平遺跡からは火焔型土器と王冠型土器の２点がほぼ完全な形で出土し国の重要文化財に指定され、これとは別の火焔型土器は大英博物館に展示されています。堂平遺跡の住居跡から検出された土器には、群馬県から長野県のほか東北地方の系統を引く土器群も含まれ、広範囲にわたる地域との交流が窺えます。

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