奈良県の料理

奈良県は周囲を山岳に囲まれており、野菜を煮炊きや和え物にする食文化が広まりました。山岳地帯では木の実や雑穀のほか塩漬けにした山菜などとアユやアマゴなどの川魚の食文化が広まり、平野部では奈良時代に遣隋使や遣唐使から多くの文化が持ち込まれ、茶や清酒を使う食文化が生まれました。
奈良県の郷土料理

柿の葉寿司
塩で締めたサバを酢飯と一緒に柿の葉で包んだ押し寿司で、江戸時代中期に紀州の漁師が吉野川沿いの村で売り出したのが始まりとされます。

奈良のっぺ
里芋や大根、人参などを使った具だくさんの煮もので、精進料理として振る舞われていました。里芋が煮くずれて自然にとろみがつくのが特徴です。

大和の雑煮
豆腐、祝だいこん、金時人参、里芋、丸餅などが入った白味噌仕立ての雑煮で、雑煮の餅を取り出して砂糖入りのきな粉につけて食べる地域が多いです。

茶粥
弘法大師空海が唐から茶の種子を持ち帰り仏隆寺で茶の栽培が始まり、煮出したほうじ茶の中に冷やごはんを入れて炊いた茶粥が定着しました。

奈良茶飯
東大寺の練行衆の食事として僧坊で古くから食べられていた料理で、旅人が江戸に持ち帰り浅草寺付近に奈良茶飯の店が多くできて広まりました。

いもぼた
うるち米に里芋を加えてもち米のようにしたぼた餅で、米を大切にする農家の人たちの生活の知恵として冷えても柔らかいのが特徴です。

かしわのすき焼き
鶏肉を使用したすき焼きで、天満宮の秋祭りのお祝いの席で天神宮の守護神である牛の代わりに食べられました。

にゅうめん
素麺発祥の地とされる桜井市三輪の三輪素麺は、鎌倉時代に油を塗り細く伸ばす技術が中国に伝わり、室町時代に完成したとされています。

飛鳥鍋
鶏肉、野菜を牛乳とだし汁で煮込んだ鍋で、中国唐の使者が孝謙天皇に練乳に似た乳製品を伝えたことで乳牛が飼育されるようになり、この料理が生まれました。

半夏生餅
つぶし小麦ともち米を混ぜてついた餅で、田植えが終わり田の神を送る早苗饗で食べられることから、小麦餅やさなぶり餅とも呼ばれます。

葛餅
葛粉から作られる透明でプルプルとした舌触りのいい餅で、吉野地方に住んでいた山の民である国栖人が葛から葛粉をつくることから名付けられました。

蕨餅
蕨粉に水や砂糖を加えて加熱しながら混ぜて冷やし固めた和菓子です。蕨粉はワラビの根に含まれるデンプンからつくられる希少価値の高いものです。

かき氷
和銅3年(710年)に吉野川上流域の月日磐に氷神が祀られ、そこの氷室でできた氷が平城宮に献上されてかき氷とした食べられました。

蛸もみうり
小口切りにしたきゅうりを塩で柔らかくなるまでよくもみ、タコと和えた酢の物です。

さんま寿司
吉野郡十津川村に伝わる料理で、北部は塩漬けしたサンマと塩と酒で炊いた米と一緒に漬け込んで長期発酵させ、南部は酢飯にのせる押し寿司です。

鮎寿司
吉野山地の清流で育つ鮎を使う寿司で、古くはご飯と鮎を詰て1か月ほど熟成させたなれずしにしていました。

奈良和え
奈良漬を使用した和え物です。奈良漬は贅沢な食べ物でしたが、江戸時代に漢方医の糸屋宗仙が白瓜を酒粕に漬けて町家に売り出して一般に定着しました。

柿なます
大根と人参を使用した紅白なますに干し柿を入れた酢の物で、昔から正月に食べる料理として受け継がれています。

でんがら
餡を包んだ餅を朴の葉で包んだ伝統菓子で、男の子の立身出世・子孫繁栄・無事成長を願い東吉野村や川上村で作られるようになりました。

ふき俵
豊作と田植え期間中の作業安全を祈り食べられる料理で、大豆と米を塩味で炊いておにぎりにして茎のついたふきの葉で包んでいます。

まなめはり
塩漬けした下北春まなを使用しためはりずしのことで、十津川地域では高菜を使い、下北山村地域では下北春まなを使います。

色ご飯
米が貴重な頃に米を節約するため、さまざまな具を混ぜて炊いたことが始まりとされています。

ずいきの煮もの
ずいきとは里芋の葉柄のことで乾燥させた芋がらは保存食となります。芋がらは水で戻して煮物や味噌汁の具として利用されます。

七色お和え
真言宗の盆のお供え料理の一つで、なす、かぼちゃ、ごぼう、人参、さやいんげん、ずいき、みょうがなど旬の野菜7種類を使う和え物です。

しきしき
小麦粉に水と砂糖を入れて薄く焼いたおやつで、奈良盆地中部では古くから食べられてきました。

大和まなと薄揚げの煮もの
大和の伝統野菜である大和まなは、癖のない味で歯ごたえも良くさまざまな料理に使用されています。

いたどりの煮もの
春の山菜として欠かせない食材であるいたどりは塩漬けして長期保存でき、炒めもの、煮もの、揚げものなどで食べられています。

あまごの甘露煮
渓流の女王と称されるアマゴは県の魚に指定され、天ぷらや塩焼き、ムニエル、甘露煮などさまざまな料理で食べられます。

生節とねぎの煮もの
海に面しない奈良県では日持ちのする生節を使う煮物がよく食べられ、ねぎやふき、さやえんどう、たけのこなどの野菜と炊かれます。

エイの煮こごり
葛城地域などで食べられる赤エイを甘辛く煮つけた料理で、煮るとエイのゼラチン質が煮汁に溶け出して冷めるとゼリー状に固まるため煮凝りと呼んでいます。