大谷の奇岩群と大谷寺(大谷観音)
大谷地区に広く分布する大谷石は柔らかい石質のため、古くから石材として重宝されました。大谷の奇岩群は縄文時代には洞穴が住居や墓地として使用され、平安時代には弘法大師が洞穴の側面に磨岩仏を彫像しています。江戸時代中期からは商業目的で採石されるようになり、明治時代から昭和時代にかけて採石産業が活発化しました。
大谷の奇岩群
大谷地区に広く分布している緑色凝灰岩は大谷石と呼ばれています。大谷石は1500~2000万年前に火山から噴出した火山灰や軽石岩片が海底に蓄積し、固結して生まれました。火山灰や軽石岩片が凝固して生まれた軽くて軟らかい石で、加工がしやすく耐火性にも優れていると言われます。
耐火性に優れる柔らかい石です
名物の餃子像も大谷石で加工されています
大谷石は加工しやすい比較的柔らかい石質のため、縄文時代には洞穴が住居や墓地として使用された痕跡が残ります。古墳時代には石棺の材料として使用され、奈良時代には下野国分寺などの礎石に使用されました。現在も採石は続けられ、建築物の外壁や石像などで使用されています。
大谷寺の磨岩仏
大谷の奇岩群は、奇岩に染み込んだ水が谷から湧き出て川を形成しています。谷には毒蛇が棲みつき、毒蛇が流す毒水が魚や鳥獣を死に至らせるため地獄谷と呼ばれて恐れられていました。弘仁元年(810年)の頃に真言宗の開祖である弘法大師がこの地を訪れると、毒蛇の話を聞いてこれを退治するため地獄谷に入りました。弘法大師が地獄谷を去り村人たちが谷奥に入ると、高い岩山に刻まれている光り輝く千手観音立像を見つけました。
奇岩の前に本堂があります
秘仏のため撮影は禁止されています
弘法大師が刻んだとされる千手観音立像には、大谷寺(大谷観音)が創建されました。本堂内に安置される磨岩仏は、千手観音のほかに釈迦三尊、薬師三尊、阿弥陀三尊が配置され、それら十体を総称して大谷崖窟仏と呼ばれています。大谷の磨岩仏は日本最古の石窟仏として国の特別史跡重要文化財の指定を受けています。
蛇を使いとする弁財天様が祀られます
弘法大師の法力により改心して白蛇となりました
本堂や併設された宝物館は撮影できませんが、大谷寺で出土した縄文時代の遺体なども展示されています。境内にある池には弁財天堂があり、池の片隅には弘法大師の法力により改心した白蛇が安置されています。
大谷資料館の地下採掘場跡
大谷石は江戸時代中期から採石が始められました。当初は農閑期に採掘が行われていましたが、明治時代から大谷石は需要が大きく伸び、昭和40年代には採石産業がピークを迎えました。大谷資料館の地下採掘場跡は、大正8年(1919年)から昭和61年(1986年)までの70年にわたり大谷石を掘り出した巨大な地下空間です。
大谷石が採石された地下坑です
昭和35年まで手作業で採掘されました
採石は昭和35年(1960年)に機械が導入されるまで手作業で採掘が行われました。階段1段ほどの大きさの石1本を切り出すのに、ツルハシで4回叩いて削り出しました。この地下採掘場から切り出した石は1000万本にもなります。
夏場でも冷たく保たれています
展示会場として利用されています
2万平方メートルの地下採掘場跡は、平均気温8度前後で保たれる天然の冷蔵庫です。この環境を利用して昭和18年(1943年)には陸軍の糧秣廠や被服廠の地下秘密倉庫と使用されました。太平洋戦争末期に中島飛行機の地下軍需工場となりましたが、昭和44年(1969年)からは政府米の保管倉庫として再び活用されるようになりました。昭和54年(1979年)に大谷資料館として初めて一般に地下採掘場が公開されると、コンサートや美術展、演劇場、地下の教会として使われています。
大山阿夫利神社と大谷元観音
明治時代になり採石産業が活発化すると、大谷石採掘の安全を祈願して地元石材採掘業者が大山阿夫利神社を創建しました。小さな社しかありませんが、山の神として祀られる大山祗命を主祭神としています。
大谷石採掘の安全を祈願して創建しました
お金が増えると言われる池がある大谷寺の元寺です
大谷寺の近くにある大谷元観音は、奥の洞穴に祠があります。その隣にある銭洗観音は、池の水でお金を洗うと何倍にもなるという謂れがあります。
大谷公園と平和観音
太平洋戦争が終わると大谷観光協会と地元の熱心な後援により大谷平和観音が建造されました。昭和29年(1954年)に完成した高さ27メートルの大谷平和観音は、太平洋戦争の戦死戦没者の供養と世界平和を祈念しています。東京芸術大学の飛田教授が制作して大谷の石工達が彫刻して、昭和31年(1956年)に日光輪王寺門跡である菅原大僧正により開眼供養が行われました。
戦没者の供養のために彫刻されました
天狗が投げたという大きな岩が岩の突端に乗ります
大谷平和観音は大谷公園として整備され、公園は大谷の奇岩に囲まれています。大谷公園の入口にある天狗の投石は、大きな岩の上に今にも落ちそうな岩が乗り、落ちないようにワイヤーで固定されています。
まち旅(旅行、観光)の記録
まち旅(旅行、観光)するために参考となる情報です。
- 住所
- 〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町1198
- アクセス
- JR宇都宮駅から立岩行きバスで30分、大谷観音前から徒歩3分
- 営業時間
- 08:30~17:00(4月~9月)
09:00〜16:30(10月~3月) - 料金
- 500円(大谷寺)
800円(大谷資料館)
平和観音は無料 - 地図