ルネサンスの巨匠ミケランジェロ建築
ルネサンスの巨匠ミケランジェロは、メディチ家の支援を受けて多くの作品を生み出し、教会のフレスコ画や建築などを手掛けました。神の如きと言われたミケランジェロに目をつけたローマ教皇は、長い年月で廃墟と化した古代ローマ時代の聖域カピトリーノの丘の整備をミケランジェロに依頼しました。ミケランジェロは古代ローマの建造物が並ぶいびつな空間にカンピドーリオ広場を整備しました。
ルネサンス
ルネサンスは、14世紀イタリアで興隆した文学や芸術などの革新運動で、16世紀までにヨーロッパ全土に展開しました。キリスト教の神を中心とした考え方から離れ、古代ローマやギリシャ文化を復興して個性を尊重する考え方へと変化し、芸術面では立体的で写実的な描写が採用されました。ルネサンスはメディチ家を始めとする資産家の支援により栄えましたが、イタリア戦争でイタリアから資産家が追放されて衰退していきました。それでもルネサンスの波は宗教改革へと発展し、現在の価値観に至る基礎となりました。
ルネサンスの巨匠ミケランジェロ
ミケランジェロ・ブオナローティは、レオナルドダヴィンチ、ラファエロと並びルネサンス三大巨匠のひとりに数えられます。13歳でドメニコ・ギルランダイオの工房に弟子入りし、メディチ家に派遣されました。ミケランジェロはメディチ家の支援により、最後の審判やシスティーナ礼拝堂の天井画、サンピエトロ大聖堂のピエタやダビデ像などの代表作を製作していきました。
ミケランジェロ
イタリア・カプレーゼに生まれて神の如きと言われたイタリア=ルネサンスの巨匠です。
サンピエトロ大聖堂のピエタ
ルネサンスの影響を受けて、聖母マリアとキリストが写実的に彫刻されています。
カンピドーリオ広場の設計
16世紀のカピトリーノの丘は、古代ローマの建造物が市庁舎として使用されていましたが、周囲は廃墟と化しました。1536年に教皇パウロ3世はイタリア=ルネサンス期の巨匠ミケランジェロに市庁舎前を整備するよう依頼して、ミケランジェロは1534~38年に広場を設計して整備が進められました。
カピトリーノの丘
古代ローマの都市は、紀元前6世紀頃に7つの丘に造られていた集落が合体して形成されました。カピトリーノの丘はローマの七丘のひとつで、最も標高が高いため特に重要な場所としてローマ神話の主神ユピテル(ジュピター)などの神殿が建てられ、宗教的な儀式や凱旋式などが行われました。
ローマ建国の神話
ローマは、双子の兄弟により建設されたと伝承されています。軍神マルスとレア・シルウィアの間にロムルスとレムスの双子が生まれました。この双子がやがて王位を継承することを恐れたアルバ王アムリウスは、双子をテヴェレ川に投げ捨て殺害しようとしました。一命を取り留めた双子の兄弟は雌狼に育てられ、やがて兄ロムルスがテヴェレ川に都市を建設して王となり、彼の名前からローマと名付けられました。
カピトリーノの丘
ローマの中心的かつ神聖な場所でした。カピトリーノは英語で首都を意味するキャピタルの語源になりました。
カピトリーノの丘
神の如きと言われたミケランジェロは、古代ローマの建造物が並ぶいびつな空間にカンピドーリオ広場を整備しました。
カピトリーノの雌狼
紀元前5世紀にカピトリーノの丘から発見されたもので、ローマのシンボルとしてローマ市内の各地に設置されています。
ローマ市庁舎前の像
ローマ市庁舎の前にある大理石のレリーフで、テヴェレ川の神の右手の下に雌狼と双子の彫像があります。
カンピドーリオ広場の設計
ミケランジェロは、すでに建てられていた古代ローマの建造物を取り壊すことなく広場をデザインしました。建造物が綺麗な直角に並んでいないため、ミケランジェロはいびつな形をした広場で建物が左右対称に見えるよう、床に幾何学模様を描くことで違和感を感じさせない広場を作り上げました。
カンピドーリオの坂道
カンピドーリオ広場までの道は、ミケランジェロが手掛けた緩やかな階段状の坂道があり、その上には両端に双子の神(ディオスクロイ)の彫像があります。王政ローマ時代にローマから追放された国王ルキウス・タルクィニウスは、エトルリア人の助力によりローマに戦いを挑みますが、軍隊を持たないローマはカストールとポルックスの双子の神が騎兵となりローマを勝利に導いたことで共和政へと移行しました。
坂道
ミケランジェロがデザインした段差を低くして奥行きを深くした緩やかな階段は、馬で広場に通行することを可能にしています。
ディオスクロイ
ローマを共和政に導いた双子の神が広場を守ります。この像は王政から共和政に移行したことをローマ市民に伝える意味がありました。
カンピドーリオ広場
カンピドーリオ広場は、中心にはマルクス・アウレリウスの騎馬像があり、右手にコンセルヴァトーリ宮殿、左手にカピトリーノ美術館、正面にローマ市庁舎(セナトリオ宮)が建ち並んでいます。ローマ市庁舎の正面のデザインは16世紀にミケランジェロが設計したもので、中央にローマの戦いの女神ミネルヴァの彫像を配置しています。カンピドーリオ広場の中央には古代ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの騎馬像を配置してサン・ピエトロ大聖堂に視線を向けています。
ローマ市庁舎
古代ローマで公文書館として使われた施設(タブラリウム)で、12世紀から市庁舎として使用される世界で最も古い市庁舎です。
女神ミネルヴァ
市庁舎の正面中央には古代ローマの戦いの女神の像が安置されています。
マルクス・アウレリウスの騎馬像
古代ローマ皇帝の像としては唯一残されているもののレプリカで、視線がサン・ピエトロ大聖堂の方に向くように配置されています。