世界最大級の阿蘇カルデラ

27万年前から9万年前までに発生した4回の大規模な火砕流は世界最大級の阿蘇カルデラを形成しました。火口であるカルデラ内部には人が住むようになり、人と密接な関係を持ちながら今に至ります。今もなお活動を続ける阿蘇は熊本県のシンボルとして、火の国と呼ばれる由来となりました。
阿蘇カルデラの形成
現在も火山活動が続いている阿蘇山は、およそ27万年前に誕生して多くの噴火を繰り返してきました。中でも阿蘇1から阿蘇4と名付けられた4つの噴火の規模は群を抜いており、特に約9万年前の阿蘇4は桁違いの破壊力で南北25キロ、東西18キロほどが陥没してカルデラを形成し、そのときの火砕流は山口県まで及び火山灰は北海道まで達しました。

阿蘇山
4回の大規模な火砕流噴火で地下のマグマだまりが空洞となり、350平方キロに及ぶ地盤が陥没してカルデラが形成しました。
蹴破り伝説
初代神武天皇の孫にあたる健磐龍命は、火山を制して田畑をつくることを命じられました。健磐龍命は阿蘇カルデラに湛えられていた水で田畑を潤すことを考え、外輪山の一角を蹴破りカルデラ湖の水を流して田畑をつくりました。

立野渓谷
健磐龍命が蹴破った外輪山の一角とされ、健磐龍命が蹴破るときに尻餅をついて、立てぬと言われたことから立野と名付けられました。
人の営み
旧石器時代や縄文時代の人の営みはカルデラ内部では確認されておらず、阿蘇外輪山において30カ所ほど確認されているにすぎません。カルデラ内部に人が居住するようになるのは弥生時代中期からで、阿蘇カルデラの湿地の微高地で生活を始めました。
日本一広い阿蘇の草原
阿蘇には日本最大級の草原が広がります。かつては森林が広がりましたが、1000年以上前から人びとが野焼きをして環境を守りました。枯草に覆われた台地を焼き尽くして生命力を引き出し、土に戻った灰は栄養となり草原が生まれて放牧された牛のエサとなります。

阿蘇の草原
新たに生まれた種類が多い草は、牛の健康に良いとされます。阿蘇外輪山の牧野などに放牧されて育てられた阿蘇の赤牛はブランド化されています。
阿蘇の信仰
阿蘇山は太古から信仰の対象でした。人びとは火山の力を恐れ敬い、その大きな力に五穀豊穣を願いました。大和朝廷も火口から湧き上がる力を敬い、阿蘇山頂の火口湯溜まりである神霊池は、地底からの力を映すと信じられて池の色や噴煙から国の命運を占いました。

神霊池
阿蘇山火口は国家祈祷の対象となり、その変異は太宰府を通じて都の朝廷に報告されました。現在も毎年6月に御幣を納める火口鎮祭が行われています。
阿蘇高岳を歩く
阿蘇山は阿蘇カルデラに点在するいくつもの山の総称で、高岳、中岳、根子岳、烏帽子岳、杵島岳からなる阿蘇五岳を中心に広大な山岳景観を生み出しています。
- 山行日
- 2010/08/20
- 天 候
- 晴れ
- ルート
- 仙酔峡(12:15)~高岳(14:20)~仙酔峡(16:15)
- 地 図
- 山と高原地図「阿蘇・九重 由布岳」
- 同行者
- ひめ
- 標 高
- 高岳(1592m)

仙酔峡
千人が酔うほど美しい峡谷から名付けられました。山肌には5万株ものミヤマキリシマが自生しており、5月中旬頃になると一帯がピンク色に染まります。

仙酔尾根
高岳までの登山道の一つで登り一辺倒のいわゆるバカ尾根です。登山道はガレているため落石が多いようです。

高岳の岩壁
高岳の北側の岩峰は鷲ヶ峰と呼ばれ、荒々しい溶岩の岩肌がむき出しになり、火口壁の縞模様が現れています。

阿蘇高岳
標高1592メートルの阿蘇カルデラの最高峰です。稜線をたどれば中岳へ抜けられますが、火山ガスの噴出が多いときは通行止めになります。