八ヶ岳連峰

八ヶ岳は山梨県と長野県にまたがる山塊で、日本百名山に指定されています。夏沢峠を境に北八ヶ岳と南八ヶ岳に分かれます。北八ヶ岳は天狗岳を最高峰とし、比較的なだらかな山容で美しい原生林と湖が特徴的です。南八ヶ岳は赤岳を最高峰とし、独立峰が連なる雄大な山塊を形成しています。
八ヶ岳の形成
八ヶ岳は北の蓼科山から南の編笠山まで、およそ20キロにわたり南北に火山列を形成しています。八ヶ岳の火山活動は、約125万年前の北八ヶ岳の活動に始まり、次いで南八ヶ岳が活動しました。大がかりな侵食期を経て、約40万年前に新期活動が南八ヶ岳から始まり、最後に北八ヶ岳が活動しました。夏沢峠を境に南側と北側で大きく地形が異なり、比較的古くに形成した南八ヶ岳は長い年月による浸食や崩壊で急峻な地形となりました。
富士山と八ヶ岳の背比べ
八ヶ岳の名称は、たくさんを意味する八百万の八の字が用いられた説が有力とされています。かつて八ヶ岳は富士山と同じくらい高く、富士山と八ヶ岳はどちらが高いか喧嘩を繰り返していました。見かねた阿弥陀如来は、富士山と八ヶ岳の頭に樋を渡して水を流すことにしました。水は富士山側に流れていき、激怒した富士山は八ヶ岳を蹴り飛ばし、八ヶ岳は八つに砕けたと伝えられています。

北八ヶ岳
10万年から数千年前の火山活動でできた比較的新しい火山群で、浸食があまり進んでいないため八ヶ岳のなかで女性的な緩やかな山容をしています。

南八ヶ岳
およそ20万年前まで繰り返した火山活動で形成しました。阿弥陀岳付近で大規模な山体崩壊を起こし、山肌が大きく削られたことで男性的な急峻な山容を形成しました。
八ヶ岳の恵み
火山活動を繰り返した八ヶ岳は、北八ヶ岳から霧ケ峰の一帯に黒曜石の産地を生み、豊かな伏流水が落葉広葉樹の森を形成しました。縄文時代の人びとは八ヶ岳山麓で狩猟採集して生活の糧を得るようになり、八ヶ岳を自然信仰の対象として崇敬しました。険峻な八ヶ岳は仏教の伝来で修験道の修行場へと変化し、仏教に由来する峰が数多く残されています。八ケ岳山麓の豊富な温泉は戦国時代の武田氏の湯治場として利用されていましたが、交通の発達や近代登山の流行などの後押しを受けて広く知られるようになりました。

星糞峠
黒曜石の破片が星のように輝いていることから名付けられました。星糞峠には数千年にわたり黒曜石が採掘された跡が残されています。
北八ヶ岳を歩く
北八ヶ岳は標高が南八ヶ岳よりやや低く、原生林が深く苔が多く自生する神秘的な森を形成し、白駒池などの池沼が点在している特徴があります。仁和3年(887年)の東海・南海地震で大規模な山体崩壊を起こし、形成した巨大な天然ダムが翌年に決壊して大きな被害を出した記録が残されています。
蓼科山
蓼科山は八ヶ岳連峰の最北端に位置しています。円錐形の美しい姿から諏訪富士とも呼ばれ、日本百名山にも選定されています。神話では蓼科山は八ヶ岳の妹にあたり、富士山に蹴飛ばされて砕けた八ヶ岳の姿を見て、流した涙が川となり諏訪湖を生んだとされます。
- 山行日
- 2005/11/06
- 天 候
- 晴れ
- ルート
- 七合目の鳥居(06:45)~天狗の露地(07:30)~蓼科山荘(08:00)~山頂(08:30)~蓼科山荘(09:20)~天狗の露地(09:40)~登山口(10:30)
- 地 図
- ガイドブック
- 同行者
- ひめ
- 標 高
- 蓼科山(2530.3m)

天狗の露地
七合目登山口から登り始めると、馬返しのあたりから岩が増えてきます。天狗の露地は展望が開けた岩場地帯で、眼下に女神湖が眺められます。

蓼科山
山頂まではハイマツの林を進み、将軍平から山頂までは丸みを帯びた大きな岩場を通過します。山頂は岩が積み重なる広い岩稜帯で、南八ヶ岳や白樺湖などが見渡せます。
北横岳・縞枯山
北横岳は八ヶ岳の最終噴火で生まれた溶岩台地を形成しており、有史以来噴火は認められていませんが、平成15年(2003年)の活火山の見直しで活火山に認定されました。北八ヶ岳ロープウェイを利用することで手軽に登山できる人気のエリアで、北横岳や縞枯山ともシラビソが寿命を迎えて立ち枯れを起こす縞枯現象が見られることで知られています。

北横岳
主脈の横岳と区別するため名付けられた双耳峰で、北峰と南峰からなります。有史以来噴火の記録はありませんが、八ヶ岳で唯一活火山に認定されています。

縞枯山
シラビソの樹幹が寿命を迎えて立ち枯れ、白い横縞をつくる縞枯現象を生じることから名付けられました。山頂部分はシラビソやコメツガの森に覆われて展望が遮られています。
天狗岳
天狗岳は日本二百名山のひとつで、東天狗岳と西天狗岳の双耳峰を成しています。東天狗岳は岩場を形成していますが、北八ヶ岳の最高峰の西天狗岳はなだらかな地形をしています。シラビソの原生林と苔むす森が魅力的で、唐沢鉱泉を起点にすれば比較的短い時間で登頂することができます。

東天狗岳
東天狗岳の北にある天狗の鼻が天狗の横顔を彷彿とさせることから名付けられました。八ケ岳の主稜線に位置し、山頂はそれほど広くありませんが硫黄岳方面の稜線が特に絶景です。

西天狗岳
天狗岳の最高峰で北八ヶ岳の最高峰となり、東天狗岳から稜線が見渡せます。広く平坦な山頂からは八ヶ岳主稜線が美しく、唐沢鉱泉との途中から硫黄岳爆裂火口が眺められます。
南八ヶ岳を歩く
南八ヶ岳は、八ヶ岳連峰の最高峰である赤岳を主峰として、2800メートル級の独立峰が連なります。北八ヶ岳よりも古く形成したことで浸食作用が進行し、幾つもの鋭く尖る山稜を形成しました。山岳信仰の対象として修験道が盛んに行われたため、阿弥陀岳や権現岳など仏教に由来する峰が多くあります。
主峰赤岳と周遊
南八ヶ岳は八ヶ岳のなかでも標高が高く、男性的と形容される険峻な山岳地帯です。最高峰の赤岳の周囲には、標高第2位の横岳、第3位の阿弥陀岳と集中しており、これらの山は断崖の岩場やハシゴ場が連続します。南八ヶ岳最北に位置する硫黄岳は、北八ヶ岳のような平坦な地形の一部が山体崩壊で削り取られています。
- 山行日
- 2006/09/09~2006/09/10
- 天 候
- 晴れ
- ルート
- 美濃戸口(10:00)~行者小屋(13:45)(幕営)
行者小屋(05:20)~阿弥陀岳(06:40)~赤岳(08:20)~横岳(10:00)~硫黄岳(11:20)~赤岳鉱泉(12:35)~美濃戸口(15:20) - 地 図
- 山と高原地図「八ヶ岳」
- 同行者
- ひめ
- 標 高
- 阿弥陀岳(2805m)、赤岳(2899.2m)、横岳(2829m)、硫黄岳(2760m)

阿弥陀岳
赤岳、横岳に次ぐ3番目に標高が高い山で、山岳信仰に由来する阿弥陀如来の石碑が祀られています。阿弥陀岳は展望が良いですが、岩場が多く鎖場やハシゴが設置されています。

赤岳
八ヶ岳連峰の最高峰で、火山噴出物に多く含まれる鉄分が酸化して赤く見えることから名付けられました。中岳から赤岳は絶壁で、鎖場とハシゴが連続します。山頂は絶景ですが狭くて窮屈です。

横岳
赤岳の北に連なる岩峰群で、八ヶ岳屈指の険しさを持つ岩稜帯です。赤岳から痩せた稜線を歩いて、大権現、三叉峰を経由して横岳に到達します。

硫黄岳
東方の本沢温泉付近で硫黄の採掘が行われていたことから名付けられました。山頂はなだらかな地形をしていますが、東側は大規模な山体崩壊で断崖絶壁を形成しています。
編笠山・権現岳
編笠山と権現岳は相対的な山容をしています。編笠山は編み笠を伏せたようななだらかな円錐形で、権現岳は岩場や鎖場が多い本格的な岩稜を形成して修験道の霊場ともなりました。権現岳は信仰の対象として平安時代には神階を授かり、八ヶ岳信仰の中心地ともなりました。
- 山行日
- 2007/06/12~2007/06/13
- 天 候
- 晴れ
- ルート
- 観音平(11:40)~雲海(12:15)~押手川(12:55)~編笠山(14:00)~青年小屋(14:50)、幕営
青年小屋(06:05)~権現岳(07:00)~三ツ頭(07:50)~前三ツ頭(08:10)~天女山(09:30)~甲斐大泉駅(10:25) - 地 図
- 山と高原地図「八ヶ岳」
- 同行者
- 単独
- 標 高
- 編笠山(2523.7m)、権現岳(2715m)、三ツ頭(2580m)、前三ツ頭(2364.4m)、天女山(1528.8m)

編笠山
観音平から押手川を抜けて岩場を通過すれば編笠山の山頂に到着します。編笠山は岩場の広い山頂で八ヶ岳連峰が大きく、遠くは南アルプスを一望できます。

権現岳
東岳と西岳の双耳峰で、一般的に権現岳が東岳で西岳はギボシと呼ばれています。ギボシの険しい岩場を越えて権現小屋に到着すれば権現岳はすぐそこです。

三ツ頭
権現岳から連なる稜線を進んだところに三ツ頭と前三ツ頭があります。視界は良好で八ヶ岳連峰全体を望むことができます。

天女山
美し森で会議をした八百万の神は、最後に天女山に住む天女に舞を奉仕させました。天女は舞を披露するため、天の河原で身を浄めて舞衣を羽衣の池で洗い浄めたとされます。
